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| 96歳の痴呆症の母。 在宅介護を決意した息子夫婦の絆 |
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| 神奈川県相模原市/滝沢雍昭さん(47歳)・静子さん(69歳) | ||||||||||||
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ほぼ2か月の入院生活を経て退院するが、痴呆の症状は入院とともに始まった。倒れる前でも、時折、おかしなことをいったりすることがあったとはいえ、別に気にとめるほどのことでもなかったという。 「入院してすぐにわけのわからないことを始終ベラベラしゃべりまくりましてね。当初6人部屋に入ったのですが、周りの人が眠れないというもんで、個室に移してもらいました」と嫁の静子さんは言う。 元気なころのスイさんの日課といえば、午前中は散歩と市立図書館での読書、午後からは三味線や編み物と、それはかくしゃくとしたものであり、『婦人公論』が愛読誌だったそうだ。90歳の秋には家族で高尾山に登り、なかなかの健脚ぶりで周囲を驚かせもした。 それだけに、この突然ともいうべきスイさんの変貌ぶりに「涙がとまりませんでした」と長男の雍昭(やすあき)さんは述懐する。
在宅での介護は五年目を超えた。この間、痴呆の症状は確実に進行しているが、雍昭・静子夫妻には“寝たきり”だけにはさせたくない、という強い意思がある。 退院直後、一階に移したスイさんの自室も、本人の寝つきの悪さに閉口し、再び二階へ戻して、トイレ、洗面所など新設。時間がかかっても日常の行動はやれる範囲で本人にやらせるようにしてきたという。 「幸い30キロを切るほどに身が軽いもんで助かっています。着るのよ、脱ぐのよと言えば、自分でやれるところはやります。むろん私がやったほうが早いんだけど。食事は私たちといっしょ。極力自分で食べさせるようにしています。手を持って、体を支えて自力で歩かせています。顔も自分で洗って、入れ歯も自分できれいにさせて。でも時折入れられなくなってきましたね。トイレは以前は合図してくれたんですが、いまは全然教えてくれません。おむつを仕方なく使っていますが、これが大変ですね」と静子さんは言う。
雍昭さんも「改めてどうのということはなかった。きわめて自然に、在宅で、自分たちの手で看取ってやろうと思っています」と言う。 「女房も習い事なんかあるし、ぼくもゴルフへ行ったり、自治会の会長などやってるものでいろいろ用事はあるんですが、1か月の予定表に互いの予定を書き入れて、調整してお袋を看るようにしています」と夫が言えば、「たまには母を施設に預けて(ショートステイ)、夫婦で旅行でもと言うんですが、主人は俺はいいからと言います。主人はそれでいいんでしょうけど」と妻は笑って応える。 「子どもたちが年に2回ぐらい女房を旅行に連れて行ってくれます。その折は無条件で行かせるようにしています。そりゃあたまにはお袋が原因でイライラして、けんかになったりするときもありますが、お互い我慢、我慢ですね」(雍昭さん) 雍昭さんはスイさんの側で寝る。多いときには一晩に4〜5回起こされる。ふとんをはいだりして大変だが、対応は雍昭さんがやる。なんとか静子さんを熟睡させてやりたいとする思いやりであろう。
ご夫妻には、独立されている二人の息子さんと一人のお嬢さんがいる。お孫さんは小学校5年生、6年生の二人。時たま遊びに来ては、こうした光景を見聞きして、「おじいちゃん、おばあちゃんは大変なんだね」と言ってくれるとか。 孫たちは、おのずと自分の親を大切にしていく人間になっていくだろうと、ご夫妻は信じている。 65歳で永年勤め上げてきた商社を離れ、「さて、これから」と思う矢先に、スイさんの介護が始まった。家族介護における男性としての自分の立場と役割に、自問自答し続ける雍昭さんの姿は、奥さんにとって、何にも増して心強いものであるに違いない。
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