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| 私が炊いて食ぶる間はここに置いてください と、お願いしちょりますの。 独りでいるほうがいいです |
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| 大分県竹田市/工藤サカエさん(80歳) | ||||||||||||||||
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「出生届は9月7日になってますが、生まれたのは8月28日です」 記憶力は人並み以上。「とてもしっかりしている」とホームヘルパーの吉良トヨ子さんが太鼓判を押す。 サカエさんは、竹田市高次のなだらかな山と田んぼに囲まれた小さな家で、ずっと一人暮らしを続けている。視力が0.01と0.02、一種一級の視覚障害者。 「子どものころから悪かった目は、20歳ころには見えんようになりました。夜と昼がわかりませんもん」 聴力も耳に口を付けるように話しかけなければ聞こえない。であるにもかかわらず、かまどで湯を沸かし、ご飯を炊く。七輪でおかずの煮炊きをし、鶏を飼い、畑仕事をし、なたで薪割りもする。ほうきでの掃除も毎日の日課だし、着衣の修繕だって針に糸を通してもらいさえすれば自分でやってしまう。首から下げて肌身放さず持っている財布も、布を重ねてしっかりと縫い上げた。障子は、庭にござを広げて張り替える。障子紙がうまく付かない原因が折れたさんだとわかれば、糸で縛ってつなぐ。サカエさんの2つの目は見えなくても、10本の指先にまるで目があるように、何でも独りでできるのだ。 サカエさんの楽しみは野菜づくり。畑では、ジャガイモ、サトイモ、カライモ、ハクサイ、ダイコン、ゴボウ、ホウレン草、サヤエンドウ、ニンジン、いろいろな種類の野菜をつくっている。独りで食べきれないほど収穫できたときは、「その時分にお出でてくれるヘルパーさんに食べてもろたり、大分に暮らす娘が持って帰ったり」。煮炊きしたものが残れば鶏が食べてくれる。その鶏が産んだ卵も食べきれなければ、だれかにあげる。自給自足といってもいいほどの生活力である。 吉良さんによれば、「ぐちを言わない。くよくよしない。その明るさには教えられる」と、ヘルパー仲間でもサカエさんの暮らしぶりは評判だという。
ヘルパーは一か月ごとに交代し、週に一回、通院と家事を介助している。「本人ががんばっているから」と、気がかりなこと、手直ししてあげたいことがあっても、必要以上には手を出さない。例えば、手すりの設置だ。畑に行くには急勾配の土手を登り、幅60cm深さ1.5mほどの用水路を渡らなければならない。ころんでケガでもしたら…と道の草取りや手すりの取り付けも話題に上った。しかし、慣れた環境を変えるほうが危険かもしれないと、いまだに懸案事項になっている。
独りでいたら自分の勝手のいいときに仕事ができる。老人ホームでは何をするにもみんなと同じに動かなくてはならない。サカエさんはそれがいやなのだ。「独りはのん気でいいです。亡くなっても私、よう入らんです」と語気を強めた。 じっとしているのは退屈、体を動かしていれば痛いところも忘れてしまう。だから、冬が終わり、春が来て、暖かくなると、サカエさんは俄然忙しくなる。「でけすこ、でけすこ(できること、できること)」と独り言を言いながら、畑や家の周りの草を取り、新しい野菜の種をまき、手入れをするのだ。
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